遺伝子組み換え作物はいま


何世代もの交配を繰り返す従来の品種改良とは違い、異なる品種や他の生物の遺伝子を組み込むことで、新しい性質を持つ生物を作り出す遺伝子組み換え技術。いま、この技術を利用して、特定の除草剤に強い品種や殺虫成分を含む作物などが作り出されています。

日本では、遺伝子組み換え作物の商業栽培はまだ行われておらず、種子や苗の販売もないようですが、すでに試験栽培は行われており、イネをはじめ、さまざまな遺伝子組み換え作物の研究が進んでいます。


いろいろと心配なこと


遺伝子組換え作物の健康への影響については、アレルギーや発がん性などについて世界各国で議論が続いています。

また、環境への影響については、自然界に出た遺伝子組み換えの種と在来種との交雑による遺伝子の攪乱や生態系の混乱による生物多様性の崩壊などが懸念されています。

海外の農業の現場では、知らないうちに自分の畑に遺伝子組み換え作物が侵入してしまった場合、その遺伝子組み換え作物の特許を持つ会社などから、農家が特許侵害の訴えを受けるなどの問題が起きています。

また、遺伝子組み換え作物の特許を持つ会社は農薬などを開発・生産する多国籍企業でもあることから、組み換え作物と農薬をセットで購入するか、訴訟継続するかの選択に迫られ、農家の主体性が損なわれる問題も起きています。

その結果、生産される作物の品種が組み換え技術を用いた特定の品種に極端に偏り、栽培作物の品種多様性が失われ、異常気象や新たな病虫害などによる大規模な壊滅が心配されます。


  

わたしたちの身の回りにも


流通・販売が認められている遺伝子組み換え作物は、現在8種類有り、これらはすべてその旨を表示することが義務づけられています。

しかし、加工食品では、加工の際に分解されたりして検出できない場合は、表示しなくてもよく(醤油や菜種油など)、主な原材料でない場合は、表示を省略できることになっており、遺伝子組み換え作物は気づかないうちに私たちの身の回りに入り込んでいるかもしれません。

また、海外で生産される飼料作物はそのほとんどが遺伝子組み換え作物で、家畜の飼料には表示義務が無いため、飼料のほとんどを輸入に頼っている日本の畜産の現場では、遺伝子組み換えの飼料の利用が増えています。

さらに、輸送途中に落ちた遺伝子組み換え作物が、港湾などの周辺で生育していることが確認されており、身近な環境への影響はもはや他人事ではなくなっています。

もうひとつ、TPPの交渉の中で遺伝子組み換え作物の輸出国は、自由貿易の障害になるとして、表示義務の撤廃を求めてくることが予想されます。



遺伝子組み換えを禁止している制度は有機JASだけ


有機JAS規格では、作付ける種苗はもちろんのこと、圃場や作物に使う資材や加工原材料、食品添加物についても、遺伝子組み換え技術を用いたものは使用禁止です。

現状では、遺伝子組み換え品種や原材料の栽培・使用を明確に禁止した法律に基づく規格・基準は、有機JAS規格以外にはありません。

つまり、有機JAS認証を受けた農産物や加工品は、生産から加工に至る全ての段階で遺伝子組み換えではないことが保証されている食べ物といえるのです。

(ただし、一部の栽培資材については、その原材料について遺伝子組み換えでないものが入手困難な場合には、現在経過措置として使用が認められています。)



作らない 使わない 私達の選択


化石燃料に代わるエネルギー源やくらしに欠かせないさまざまな素材を効率的に生産するために、遺伝子組み換え技術が重要な鍵を握っているということは、私達もわかっているつもりです。

でも、今生きているあらゆる生物への影響が心配な遺伝子組み換え作物の栽培は、外部への流出を厳しく管理された研究施設での試験栽培に限り、普通の畑や水田では栽培しないと決めましょう。

また、組換え技術の特許を守ることと、農家が何を作るか決める主体性を守ることが両立できる社会の仕組みを作ることが必要です。

そしてなによりも、貿易の自由と環境や生物多様性を守ることを天秤にかけるような話はもう卒業しましょう。

生き物たちの豊かさがあってこその、私達なのですから。

有機JASと遺伝子組み換え 私達はこう考えます