有機JAS制度とは

 有機農産物の表示については、平成4年に「有機農産物等に係る青果物等特別表示ガイドライン」(平成13年4月の改正により以降は、「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」)を制定し表示の適正化を図ってきましたが、ガイドラインには法的な強制力がないため不正表示などの混乱がありました。

 そこで、平成11年のJAS法改正を受けて、平成12年に有機農産物及び有機農産物加工食品の特定JAS規格を定め、規格に適合するかどうか検査を受けて合格して有機JASマークがつけられたものでなくては「有機栽培大根」、「オーガニックトマト」等の表示をしてはならない制度が導入されました。(実際に表示の規制が始まったのは、平成13年4月1日からです。)

 これにより、認定を受けていないものが「有機栽培レタス」などと表示することや、有機JASマークをつけずに「有機ほうれんそう」などと表示することができなくなりました。また、ガイドラインのときに紛らわしいと指摘が多かった、「低農薬有機栽培」「有機減農薬栽培」といった表示にも規制がかけられるようになりました。



用語の定義

(1)登録認定機関

 農林水産大臣の定める基準を満たしその結果登録を受けた認定機関は、生産行程管理者からの申請に基づいて、その生産・管理の方法等について調査を行い、生産行程管理者を認定します。また、認定後も生産行程管理者に対して、定期的に監査を行うことで、認定の社会的信頼性を担保していきます。


(2)認定生産行程管理者

 生産行程管理者とは、実際にその農産物の生産行程を管理し、又は把握している者をいいます。有機農産物でいえば、生産農家や生産者組合などがこれに該当します。認定生産行程管理者は、認定機関の認定を受けて、その生産する農産物について格付を行って有機JASマークをつけることができます。


(3)有機農産物の生産の原則

 有機農産物は、単に農薬や化学肥料を使わなければいいというものではありません。有機農産物の日本農林規格(以下有機JAS規格)には、生産の原則が次のように決められています。


  目的   農業の自然循環機能の維持増進を図ること

  方法1 化学的に合成された肥料及び農薬の使用を避けることを基本とすること

  方法2 土壌の性質に由来する農地の生産力を発揮させること

  方法3 農業生産に由来する環境への負荷を出来る限り提言した栽培管理方法を採用すること


(4)有機農産物の生産の方法

有機農産物の生産方法は、有機JAS規格に次の項目について規定されています。

①圃場の条件

  管理履歴

  隣接地からの飛散等の防止

②種苗

  有機栽培由来(改正JAS法新規格ではより厳密に規定されました。)

  遺伝子組み換え技術利用の禁止

③肥培管理

④防除

⑤収穫後の管理


(5)行程管理の方法

 行程管理とは、作物生産に関わるあらゆることがらを管理・把握することで、実際の栽培管理だけでなく、農作業や圃場に係るさまざまな書類や記録を作成・保管したり、その方法について常に改善をはかり、必要な事項について認定機関等へ報告する等の実務全般のことです。具体的には、個々の生産行程管理担当者(2-2参照)が自ら生産行程管理規程(3-3-1参照)を作成し、それに基づいて管理業務を実施します。


(6)格付の実施

 格付とは、JAS制度で定められた品質保証の手順のことです。

 一般のJAS規格は、「品質規格」であり、製品の品質が数字で示されています。これらは、製品の生産後、この規格を満たしているかどうかをします。規格を満たしているものには、これを示すためのJASマークをつけることができます。

 一方、有機JAS規格は「作り方を定めた規格」で、生産後、この規格を満たしているかどうかの格付検査は、品質ではなく、作り方が規格を満たしているかどうかの「生産行程の検査」を行います。生産行程の検査の結果、有機JAS規格どおりの作り方であることが確認できれば、有機JASマークをつけて、有機表示をすることが可能になります。

 一般のJASの格付検査は、生産・製造を行っていない第三者機関(登録格付機関)によって実施されていましたが、平成11年の改正で生産者が自ら格付することが可能になりました。有機農産物の生産行程の検査については、生産行程管理者の組織内の格付担当者によっておこなわれなければならないわけです。具体的には、個々の生産行程管理者が自ら作成する格付のための手順書である格付規程(3-3-3参照)に従って格付を実施します。


(7)表示

 JAS制度は、最終包装品の適切な表示を目的とした制度です。有機JAS法には表示方法が規定されており、これに従った表示にしなければなりません。(「有機農産物の日本農林規格参照」)また、その表示を行う場合は、有機JASマークを必ず貼付しなければなりません。逆に言えば、有機JASマークなしで「有機」という表示はできないわけです。

有機JAS制度について